ヒミツにふれて、ふれさせて。
「なんだってこんな暑い日に、具合も悪いのに出歩いたりしてるのよ。まったく」
「………」
やっぱり、違和感あるな。今まで、こんな女性的な口調…聞いたことないわけじゃなかったけれど。
はずかしくて、きちんと顔を見れずにいたけれど、きっとこの人は男だ。あんなゴツゴツした手に、こんなに背が高くて、力もあるなんて。
…と、いうか、この人…。
「…ねぇ、桜井さん。聞いてるの?」
「……」
わたしは、今まで男の人とはあまり関わりを持たずに生きてきた。もともと、あまり興味がなかったってのもあるけれど、リョウちゃんと出会ってからはなおさら。
リョウちゃん以外の男の人と仲良くするなんて、考えられなかった。だから、高校に入学して1年と少し、なんとなく、リョウちゃん以外の男の人のことは避けてきたつもりだった。
…だから、この人が、わたしの苗字を呼んだ時には、お腹の痛みを忘れて、なおかつ目が筋肉痛になるのではないかというくらい、目を見開いてしまったのだ。
「…?!」
思わず、身体を押しのけてその人を退ける。思いっきり動いたからなのか、またキュウっとお腹が痛んだけれど、その痛みを我慢して、その人を見上げた。
…今度は、正面から。
「…どうしたの?桜井さん」
「…………」
「アンタ、桜井 芽瑚 (さくらい めご) さんよね?」
おそるおそる、そのすらりとした大きな身体を舐め回すように見てみると、そこには、見たことのある姿があった。