ヒミツにふれて、ふれさせて。


子鹿みたいな顔をしたその子は、今日の話題沸騰ワード1位の“珠理の元カノ”。

ふんぞり返って仁王立ちしているその姿は、やっぱり朝と変わることなく偉そう。

わたしにどんな想いを持ってるのかは知らないけど、珠理がわたしのところに来たことがこんなにも気に入らなかったのか。


「…あのう、何の用ですか」


できるだけ関わりたくない。珠理が勝手に行動したことなんだから、珠理にも文句を言うくらいのことはしてもいいんじゃないのー。


「何の用ですかって!朝の続きに決まってんでしょ!」

「いや、だから朝のこともイマイチちょっと掴みきれてなくてですね…」


頭がぼーっとする。ご飯食べたから眠くなってくる時間か。だからなのか、なるほど。

でも、休む暇はなさそうだ。目の前の美少女がとんでもなく怒っているから、まずは逃げられるわけがない。


「…あんた、珠理の何なの?珠理のことが好きなの?」

「…好きじゃないよ…」

「じゃあなんで珠理は最近アンタに構ってんのよ!この間だって!」

「知らないよ〜。珠理に聞いて…」


高い声は可愛いと思っていたし、思いっきりアルトしか出ない声を持つわたしにとっては憧れだった。

…だけど、高い声も使いすぎると、キーキー言ってて耳がいたいな。


「珠理に聞いても、何も言わないんだもん…!けど、アンタと仲良くしてたら、わたしが珠理と別れた意味がなくなっちゃうじゃない!」

「…。珠理と別れた意味…?」

「そうよ!!珠理には、中学からずっと好きな人がいるんだから!だから、あたしは珠理から身を引いたのよ!!」

「…」


…あぁ。そういうこと。珠理と別れた意味がなくなるって、珠理にはずっと好きな人がいるからそのために別れたのに、他の子にちょっかい出しているから、それが許せなくなっちゃったっていう、そういう…。




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