ヒミツにふれて、ふれさせて。
何度もつけられた傷。からだだけじゃなく、心にも。たくさんたくさんつけられた。
だけど、今ではもう、痛みが思い出せない。それよりももっと、リョウちゃんへの想いは募っていく。
…この気持ちは、変なのだろうか。それともこんな想いでも、あの子や珠理と同じ、きれいなものなのだろうか。
そんなこと、絶対にないような気もするけど。
…たまに、よく分からなくなるよ。
「…っ」
あまり、向き合ってこなかった感情に、くらりと視界が動いた。あぁ、考えたくないことを、日頃からできるだけ考えないようにしていたことを、無理に考えていたからだ。
「…めご?!ちょっと、大丈夫?!」
視界に光が戻ったのは、瀬名の声が聞こえてからだった。
———それからはあまり覚えてないけれど、長く長く眠った後、目を開けると、わたしは白い空間にいた。
「…………めご?」
「……」
久しぶりに、学校で倒れた気がする。高校に入学してすぐ、体育で貧血を起こして倒れた時以来だ。
洗剤の匂いがする。その中に、ほんのりコーヒーの匂いが混ざって。
そうそう、天井もベッドも、白と薄い桃色で統一されている。
……ここ、学校の保健室だ。
ベッドは、薄っぺらい布団で、でもなぜか優しい香りがして落ち着いた。
わたし、どうしてこんなところにいるんだろう。