ヒミツにふれて、ふれさせて。
「…心配するに決まってんでしょ」
「…」
「あんたは、すぐ我慢するから」
ふわりと、珠理はわたしの髪に触れた。肩までしかない、わたしのぼさぼさの髪を解くように、細い指を絡めながら下に下ろす。
…なんで、このオネェは躊躇もなくこんなに人に触れるんだろう。
「やめてよっ」
「…あ、ごめん。嫌だったかしら」
「それもあるけど…」
「…」
…わたしが、知らないと思ってるからか知らないけど、珠理にはずっと好きな人がいる。それなのに、どうしてこんな風に他の人にも触れられるの。
「…何とも思ってない人にこんなことやってるから、元カノさんも傷つくんだよっ」
「…」
ピタリと、髪を撫でる指先が止まった。思わず振り向くと、珠理は何かを考えるようにわたしをじっと見ていた。
…指先は、少し離れたところで止まったまま。
「…茶々から、何か聞いた?」
「…」
「ねぇ、めご。何か聞いたのっ?」
…なんで、そんなに焦るわけ。別に、どうだっていいじゃない。
「…あんたと付き合ってたこと。けど、あんたは他に好きな人がいたから別れたこと。だけど今、あんたが好きでもないわたしにちょっかい出してるのが、気にくわないってこと。以上!」
ふんっと、鼻を鳴らして再び背中を向けた。
全部、言ってやった。そうだ、自分の中で持ってモヤモヤしている必要なんてなかったんだ。
わたしが、巻き込まれる必要なんてなかったんだ。
だったら、もうすべてこのオネェにぶつけて、片付けてもらおうじゃないか。