ヒミツにふれて、ふれさせて。
そうだ。だから、聞いたことがあったんだ。この人の声、それから、この話し方。
「…美濃 珠理 (みのう しゅり) …?」
「あら、アタシのこと知ってたの?嬉しい〜!」
キャッ、と、頰に手を添えて顔を赤くする巨人男。喜んでいるその顔は、女性も顔負けの美しさである。
…そう、わたしは知っていた。この人のことを。
「今まで、話したことなかったものね。キッカケが出来て嬉しいわ」
「………」
…美濃 珠理。わたしが通う鎌倉東高校の、2年D組か、E組かF組みの生徒だ。
(本当のクラスはどこなのか知らない。)
男子生徒とあまり接点がないわたしでも知っている。なぜなら、学年一の美しい生徒であるのに、中身は女言葉を使うオネェ男子として有名だからだ。
…くそう、きちんと話したことなかったし、顔もしっかりじっくり見たことなかったから、気づくのが遅くなってしまった。
オネェとはいえ、わたしは生理痛で苦しんでいるところを同じ高校の男子生徒に助けられてしまったということなのか。
…なんてことだ。
「桜井さんのこと、アタシも知ってたの。けど今まで話したことなかったじゃない?だから声かけるのも少し緊張しちゃったっ」
「…………はあ……」
偶然というか、成り行きとはいえ、近くで直接話すとすごい迫力だな…モデル体型の美青年が女性的な言葉を使っているというのは。