ヒミツにふれて、ふれさせて。
情緒不安定さに、嫌気がさす。わたしは、このオネェの前で何度涙を流せば気がすむのだろうか。
「—…もう、むかつく、あっち行って」
「…そんなわけにはいかないわよ」
「あっち行ってよ」
「嫌よ。泣き止むまでここにいるわ」
再び背中を向けて、スカートのポケットからハンカチを取り出した。急いで涙をぬぐって、そのまま再びポケットに突っ込む。
…冷静に、考えてみた。きっとわたしは、リョウちゃんとの恋が上手くいっていないことだけじゃない。
わたしは、上手くいかないわたしを慰めてくれる、珠理と一緒にいることがいつの間にか心地よく思っていたんだ。
…リョウちゃんが空けた隙間を埋めてくれる珠理が、心地よかった。それで、珠理にもきっと、わたしを大事に想っている気持ちがあるって信じて疑わなかった。
どこかで、珠理に助けられる自分を、自分でつくってしまっていたんだ。
その珠理に、わたしの他にもっともっと大切に想う人がいること。昔、大切にしていた人がいたことを知って。
…わたし、ヤキモチをやいていたのかもしれない。
それも、珠理のことが好きとか、そういうことじゃなくて、自分にとって都合のいい人を、取られてしまったという、もっと酷くて幼稚なヤキモチだ。
———最低なのは、わたし。
さっさと泣き止めばいいのに、珠理が後ろにいることを知っているのに、それに甘んじて今も拗ねている。可愛くない。
…こんなわたしが、自己中心的なわたしが、愛されるわけがないじゃない。
リョウちゃんに、嫌がられるのも、怒らせてしまうのも、手に取るように分かる。