ヒミツにふれて、ふれさせて。


「…めご」


また、珠理の手が触れた。その行為にまた腹が立つけど、何も言いたくなくてそのまま目を閉じる。


「…めご、ごめんね。隠しているつもりはなかったのよ」

「…」

「本当は直接言いたかった。アタシだって。けど、こんな風に知らせちゃってごめんね。友達なのに」

「…」


…ちがう。そういうことで、わたしは拗ねているわけじゃないのに。もっと、もっとひどい理由で拗ねているだけなのに。


「めご、こっちを向いて」


珠理の低い声が、耳から通って心に染み渡る。心地よく流れるそれは、わたしの心を少しずつ鎮めてくれた。

ゆっくりと、言われた通りに珠理の方を向く。

わたしの髪を撫でていた指先はそのままだったけれど、わたしが動いたから、わたしの頰に滑っていった。


…頰に触れられるのは、初めてではないけれど、その指が、少し心地よくて。


「…向いたよ」


少しだけ、自分から頰を押し当てた。



「…っ」



その瞬間、珠理は思ったよりもビックリしたようで、急いで指を引っ込めた。

…オネェのくせに、このくらいでビックリするなんて。こっちが驚くからやめてほしい。心臓に悪い。



「ちょっ、何してるの、めご…!ビックリしたわぁ」

「何照れてんの。オネェの風上にもおけないわね」

「オネェの風上とは!?」


少し赤くなった顔。おもしろい。珠理のこんな顔を見るなんて初めてかもしれない。



「わたしもごめん。リョウちゃんから連絡なくて落ち込んでいるうえに、あんたの浮いた話を聞いたもんだから、イライラしちゃってたわ」

「浮いた話って…。何も浮いてないわよ。むしろ沈んでるわ」

「はい、うまくなーい。ていうかもう放課後じゃん。帰ろう」


よいしょ、と、ベッドから身体を起こして、上履きを履いた。

…もう、涙は止まってる。




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