ヒミツにふれて、ふれさせて。
「彼氏から、連絡ないの?あれから、ずっと?」
「まぁね。でもケンカした後って、毎回こうだから大丈夫。それより帰ろう。近海くんは?」
「…近海はもう帰ったわ。今日はめごと帰るって言ってきた」
「そっ」
だったら、今日はこのオネェと帰ってやろう。元カノさんに見られたら面倒くさいけど、なんだかもう、それもどうでもいいや。
だって、珠理はさっきも言ったもの。
…わたしのことを、友達って。
「めご」
「んー?」
オレンジ色の廊下を歩いて昇降口に向かう途中、珠理は真剣な顔でわたしの名前を呼んだ。
「…本当に、迷惑かけてごめんね」
歩いていたのに、足を止める。だからわたしも、歩くのをやめた。
「…いーよ、てかそれほど迷惑もかかってないし」
「でも、分かって欲しい。茶々は、本当に中学の頃で関係は終わってるし、アンタとのことも、真剣に付き合っていきたいって思ってる」
「…うん」
「アタシが何も考えないでアンタと友達になったなんて、思わないで。アタシのことは嫌いでもいいけど、それだけは分かって」
「…うん」
…珠理が、珍しく真剣に、真剣にわたしと向き合うもんだから、なんだかまた泣きそうになってしまった。
「…珠理、わたしは別に、あんたのこと嫌いじゃないよ」
だからかな。こんな恥ずかしい言葉を、このオネェにかけてあげたいって思ってしまったのは。
でも、後悔はなかった。取り消そうとも思わなかった。
夕日の中、微笑んだ珠理の笑顔が、とっても嬉しそうだったから。