囚われのシンデレラ
トランクに詰め込んだ荷物を持ったあたし。


車の中から現れたのは昨日見た王子様だった。


どきん、と胸が高鳴る。


彼はあたしを見ると目元を和らげて微笑んだ。


「君、名前は?」


「……」


緊張しちゃって答えられない。こんなに綺麗なんだもん……


園長先生の服をぎゅっと掴むあたし。


当然、ちゃんとご挨拶しなさい、と注意される。


「すみません……大人しい子で」


もうおばさんくらいの歳の園長先生が17歳の少年に頭を下げている。


「いいえ、全然。お利口そうな子じゃないですか。君、名前は?」


もう一度尋ねられる。


優しい目。


「……ゆ、かり」


か細い、ギリギリ聞き取れるかくらいの声。


でも、彼は満足したように優しく微笑んだ。


「そう。いい名前だね、僕は薫。

紫はこれから家族になるんだよ。僕のことはパパとでもお兄さんとでも思ってくれてかまわない。よろしくね」


手を差し伸べられる。


その手を掴んだ。


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