囚われのシンデレラ
「うん!やっぱりおいしい」


メイドさんの作る料理も好きだけれど、何と言っても薫の作るトマトスープは絶品なのだ。


するすると口に入るから、飽きが来なくてすごくおいしい。


ご機嫌で朝食を頬張るあたしを見て薫はクスリと笑った。


「そんなに急ぐと喉を詰まらせるよ?」


「急いでる訳じゃないよ、薫ってば、人を食いしん坊みたいに言わないで?」


頰を膨らませてみせると薫は「ごめんごめん」と頭を撫でてくれた。


…うーん、許す!


普段より少しだけ急ぎめの朝食を摂り学校へと向かう。


もう今では当たり前になった車で通学する。


薫は仕事があるらしくて、車にはついて来ない。


あたしが通うのは、お嬢さま学校と言われる『私立黒翠学園中等部』。


ここには薫のような大財閥に生まれた少女が通っている。


学校に着くまでの時間を窓を見て過ごし、到着した。


そして車を降りようとした時、何か違和感を覚えた。


……視線、感じる。


ゾッとして後ろを振り返るが誰もいない。


「どうしましたか?紫様」


「大丈夫…でも誰かに見られてたような気がして…」


< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop