囚われのシンデレラ


「ゆーかりっ!」


教室に入るなりあたしに思いっきり抱きついてきたのは、クラスメイトの杏奈ちゃん。


彼女は小等部からこの学園に通っている内部進学生で正真正銘のお嬢様だ。


…あたしが綾小路家の養子でホントの子供じゃないことはあまり知られていない。


だから、あたしと薫がホントの兄妹だと言われることも少なくない。


杏奈ちゃんはそんなあたしの事情を知る数少ない一人だ。


「薫さんってホンットーにカッコイイよねー。あんな人がお兄様になったら、私なら恋しちゃうなぁ…

ねえ、薫さんのことどう思ってるの?」


「薫はとっても優しいし、カッコイイし最高の家族だと思ってるわ」


「うーん…最高の家族のところを恋人に置き換えても違和感がないなぁ」





確かに薫とは血は繋がってないけれど、それ以上に強い絆があると思う。


薫のことは兄だとも思ってるし、薫にとってもあたしは妹のような存在のはず。


「紫はそうでも薫さんはどうかな?血が繋がってないし、紫は無防備だから…襲われるかもよ?」


その言葉にムッとする。


「薫がそんなことするワケないわ」


「でも、薫さんと紫、まだ一緒に寝てるんでしょう?普通中学生にもなって兄妹が一緒に寝たりはしないよ?」


「え…そうなの?」


「そうなのって…紫…」


杏奈ちゃんが唖然とする。
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