奏でるものは 〜功介〜
並んでベンチに座った。
ユイカは海を見てる。
その目に何を映しているのか分からないけど、これから分かればいいから……
胃が、異様に畝るような気分だ。
今、チャンスじゃないか。行け!
「俺……と、付き合ってくれないか?」
ユイカが俺を見た。
「え?……と……」
「ホントは俺、前から見かけててさ。
話したのはこないだ初めてだけど、やっぱりユイカと付き合いたい。
俺のことをこれから知って、嫌なところはハッキリ言ってくれたらいいから」
ユイカは目を見開いた後、目線を海に戻した。
「嫌な人とは、思ってないし、また会いたいと思うの。
他の人なら映画も断ってたと思うし。
でも……素の私を知ったら嫌になるかもしれないよ?」
「それって?」
「………嫌になったら言ってよね」
もう一度、言えよ、俺!
「付き合ってくれる?」
俺の方を見て、照れたように笑いながら
「………うん」
と言ったユイカが少し赤い。
心の中は、ガッツポーズしてる俺がいる。
「良かった」
見つめ合って、ちょっと笑った。
「ごめん、そろそろ帰らないと」
「そうだな」
二人で立ち上がって、ユイカの手を、思い切って握って駅に向った。