奏でるものは 〜功介〜
墓前に行くと、歌織ちゃんがいた。
「おはよう」
「おはよう御座います。どうぞ」
花を供えて、手を合わせる。
あれから、2ヶ月か。
季節は変わるんだな。
周りの木が緑になったよ。
唯歌、俺も一歩、踏みだすよ。
以前行った広場に移動した。
「俺、指輪のこと、ずっと迷ってた。
唯歌の最期の言葉は、ショックだったよ。
唯歌がいなくなって、何が幸せなのか、わからないけど、俺は生きていくしかないんだな。
唯歌は、どんなお姉ちゃんだったんだ?」
歌織ちゃんが少し考えて、話始めた。
「お姉ちゃんは、しっかりした人だったよ。
マイペースで、だからこそ、自分がしたいことを分かってて、将来やりたいことも考えていたわ。
ピアノや箏、三味線、日舞も、やる気ない、高校卒業でやめる、大学行って両親の会社で働くって決めてた。
私が受験するのを両親に口添えしてくれたのもお姉ちゃんだった。
優しくてキレイで、そうそう、着物がよく似合ってた」
色々習い事してたんだな。知らなかったよ。
「……急だったから。
明日も会えると思ってたから。
一瞬で全部が思い出になるなんて、あの時思いもしなかった。
指輪は、どうして歌織ちゃんが持ってたの?」