奏でるものは 〜功介〜
一週間、2つの指輪をチェーンに通して、身につけていた。
風呂以外、外さなかった。
木曜日の夜に、2つの指輪を磨いた。
綺麗にしてサイタ家に預けよう、そう思った。
唯歌、一緒にいたかったよ。
久しぶりに写真を見た。
楽しかったな……
戻れないあの時に、一緒につけていた指輪。
お前は幸せだったか?
金曜日、久しぶりに学校をサボった。
昌から連絡があったけど、仮病、と返信した。
昼を過ぎても、ゴロゴロしていたが、制服に着替えて家を出て駅に向った。
唯歌があの時通ったはずの道を通った。
国道に出て、歩くと、色々な店がある。
赤い庇と白い壁に木の窓枠があるかわいい小さな店が目について立ち止まった。
ケーキと焼き菓子の店。
前に、美味しいよ、とリーフパイを持ってきたことを思い出した。
もう、分からない、分からないけど……もしかしたら……。
行きたかったなら、俺も一緒に買いに行ったのに。
一緒に行きたかったよ、唯歌。
鼻の奥がツンとして、目が潤む。
手を、拳にして、額の真ん中に、押し当てた。
それから、道を渡って、半球状にアレンジしてもらった花を受け取った。
ウェディングブーケのように、丸くなるようなアレンジ。
唯歌に贈るため。