奏でるものは 〜功介〜
7月も終わりの夏の午後。
ユイカの学校の夏期講習の帰りを待ちながら、バイクを洗って車庫で拭き上げていた。
車庫はバイクが2台は置ける広さで、小さいテーブルと椅子も置いていた。
「暑いのにここでバイクいじってるの?」
制服をちょっと着崩した唯歌がシャッターを半分閉めた入り口に立っていた。
「座れよ」
小さな折りたためる椅子に唯歌が座って周りを見て行った。
「結構、広いのね。元は車用よね?」
拭いていたタオルをバケツに入れて唯歌の隣に椅子を持って来て座った。
「今は俺専用」
「じゃ、コウスケは私専用?」
「当たり前じゃん」
そう言って、唯歌を見ると、安心したような顔になっていた。
その顔に、ドキッとして、何か衝動が抑えられなくなった。