奏でるものは 〜功介〜
翌日、昼過ぎ、車庫で本を見ながら唯歌を待っていた。
「暑い!」
声がした方を見ると車庫を覗き込んでいる唯歌がいた。
「お疲れ……」
と手招きすると、俺の横に来た。
「俺の部屋で、昼飯食う?」
「え?お邪魔していいの?」
「いいよ」
シャッターを内側から閉めて、車庫の奥のドアから家に入った。
玄関からは見えない階段を上がって、自分の部屋のドアを開ける。
空調が効いていて涼しい。
「わ、広い部屋。だけど、何にもないのね」
ケラケラ笑う唯歌に小さいテーブルの横に座るよう勧めた。
「ちょっと待ってて」
部屋を出て、お手伝いの三宅さんに、友達が来てるから、と飲み物とコップをもらって部屋に戻った。
自分の部屋に、唯歌がいることが嬉しい半面、ちょっと不思議な感じである。
「作る自信はないから買ってきた」
とコンビニのサンドイッチやおにぎりを並べた。
二人で食べるが、緊張感があって味が分からない。
唯歌は部屋をあちこち見たり、サンドイッチを食べて忙しそうだった。