奏でるものは 〜功介〜
少し眠っていた唯歌が、目を開けた。
「起きた?大丈夫?」
「……大丈夫って聞くくらいなら、何もしないでよ」
と俺の胸に抱きついてきた。
「じゃ、もっかいする?」
「ばか………今何時?」
「4時。なんか用事あった?」
「ないけど、なんか動きたくない」
「あのさ、俺、自分の誕生日プレゼントとしてさ……」
「え?誕生日……?」
俺の間近で目を見開いていた。
「いや、誕生日は知り合う前だから。
自分の誕生日に何も買わなかったから、指輪、買った。
つけていてくれないか?」
唯歌の右手の薬指に、指輪をはめた。
サイズはちょっと大きかったか?
「ありがとう、でも、習い事してるからずっとはつけていられないの」
指輪を見ながら唯歌が言った。
「習い事?」
「そう、ちょっと……ね。コウスケの指輪は?」
指輪を見せると、指にはめてくれた。
「高かったんじゃない?」
「いや、ごめん、そんな高価な物じゃなくて……」
「ありがとう」
お年玉とか、貯めてたから、大丈夫、なんてかっこ悪いよな。