奏でるものは 〜功介〜
世の中の盆休みが終わると、夏休みももう終わりになる。
「おまたせ」
隣駅の近くの繁華街の待ち合わせ場所に、ポロシャツのような紺のロングのワンピースに腰に白いカーデを巻いた唯歌が現れた。
伸びた髪をアップにして白い大きな石のネックレスをしている唯歌は少し大人っぽくキレイで、うだるような暑さの中でも涼しげに見えた。
唯歌が俺の腕に手をかけているから、左手はポケットから出さない。
腕を持って引っ張ったり、腕を組んで密着したり、唯歌が自由にできるから手を繋ぐより、ちょっと刺激的だった。
「ね、これ見て?」
雑貨屋の和風の飾りものを見つけた唯歌が目を輝かせていた。
和物が似合うよな、と思っていると
「あれぇ〜?コウスケじゃん」
振り向くと、ニヤニヤしてる優、龍、昌がいた。
「お前ら……」
「お友達?」
唯歌が話しかけていた。
「あ、コウスケの彼女?
俺たち、同級生で幼馴染で同じクラスなんだ。
俺、昌だよ、こっちが優でこっちが龍ね、よろしく〜」
「いや、よろしくしないでいいから……じゃあな」
体の向きを変えて歩きだそうとしたが、隣に昌が来て動けなかった。
「ちょっと待ってよ、折角会ったんだから、みんなでそこのファミレスでお茶でもどう?
優も龍も行くだろ?彼女さんもどお?」
乗り気になれない俺は逃げられないだろうな、と思いながらも言った。
「いや、優も龍も忙しいだろ?唯歌、行こう」
「え?……と……」
どうしたら良いのか分からない、というような表情の唯歌の気持ちが分からなかったが、そんな問答をしてるうちに、唯歌がいない方の腕を昌が取って、引っ張られた。