奏でるものは 〜功介〜



ベッドで隣で眠っていた唯歌の瞼が、薄っすらと動いた。

「目が覚めた?」

「ん、寝て、た?」

「ああ、寝てたよ。起きてシャワーするか?」

「借りていいの?」

「狭いけど……な。一応部屋を出るから、これ……」


大きなTシャツを頭から着せた。
ブカブカで裾が腿まで来るが、それはそれでかわいい。

部屋の隣にシャワー室があり、脱衣場に一緒に入ると


「コウスケ、邪魔」


と押し出そうとする。


「ば〜か、誰も来ないように見張りだろ、俺は」


えー、とブツブツ言って服も脱がずシャワー室に入り、ドアの隙間からポイっとTシャツを投げ出した。

シャワー室に入って行きたい衝動を抑えながら待った。

シャワーから出てきた唯歌に


「シャワー室に入っても良かった?」


と聞くと笑って


「殴るよ」


と言われた。

侵入しなくて良かった。





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