奏でるものは 〜功介〜
部屋に入り、床に座った。
「事故のことは、新聞にも載ってないし、ニュースにもなっていない。
詳しいことは分からないけど、昌が知り合いの知り合いから聞いただけで、それ以上は分からない……と……思う」
優がベッドに座って言った。
「俺が…」
送って行ってたら………
頭を手で支えた。
「きっといつか、線香でもあげられる日がくるさ。
しっかりしろよ?
亡くなったのは唯歌で、夢を絶たれたのは唯歌だろ。
お前はお前の夢を、叶えろよ」
優がそう言って、立ち上がった。
俺の………夢………?
それって、なんだろう。
唯歌……
鳴らないスマホを机に置いて、部屋の壁を、見つめた。
優と、龍が何か話していたようだったけど、分からなかった。
世界に1人、残されたようで、それでいて、世界中の人に責められているような、心が潰れていった。