副社長のいきなり求婚宣言!?
 こ、ここは、どちら様のお宅なのですか……

 まさか……


 ――“俺と、結婚してみないか……!”


 昼間に受けた唐突なプロポーズの台詞が、せっかく意識を取り戻した頭をガツンと殴った。


 ま、ま、まさか、こここここは、愛し合う二人が暮らす、新きょ――……


 と突飛な考えに行きつかせることなく私を引き留めたのは、玄関に綺麗に揃えられた白のスリッパ。

 もふもふのそれに書かれた“長谷川建設㈱”のロゴが、のぼせかけていた頭に冷静を取り戻させた。


 長谷川の社員であれば、すぐに察していなければいけなかったこの豪邸は、今絶賛開催中の住宅展示場の中のひとつだった。


「夜に見ると一味違うな。こういう雰囲気に飲まれるお客様もいるんだろう。やっぱり夜の展示も正解だった」


 胸元で腕を組んだ副社長様は、まず初めに入ったリビングを満足げに見回した。
< 12 / 104 >

この作品をシェア

pagetop