副社長のいきなり求婚宣言!?
 光量を暗くならない程度に抑えた広いリビングは、二階までの吹き抜け。

 展示用とはいえこの空間に生活感を生み出すためにソファとテーブル、壁掛けの大型テレビが設置してある。

 白のレンガ調に作られている間仕切りの壁は除湿・脱臭の効果がある素材で、その向こうに六人掛け用のテーブルを置いたダイニングキッチンが顔を覗かせている。

 二部屋の中央から二階に伸びる階段は、家族が一日に一度は必ず顔を合わせられるデザインだ。


 その階段を昇っていく副社長のあとをちょこちょこと小走りでついて行く。

 なぜ自分がこんなところに、しかも副社長様とともにいるのだろうと疑問は増すばかりだった。

 ここが会社の一部であると理解した時点で、夢見心地は終わっている。

 やっぱり呼び出しを受けたのは業務の一環で、私が何やら多大なる失態を犯したのではないかとじわじわ不安が襲ってきた。


 でも、庶務課の私が、展示場にまつわることで業務に携わったことってあったかな。

 あるとしたら、パンフレットの発注くらいで……


 首を傾げる私は、当の呼び出しを掛けたご本人様からは何のご指摘もされることなく、後ろをついて行くばかり。
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