副社長のいきなり求婚宣言!?
 こ、こんなところで……っ!?


 日陰女子の私だって、一応一通りのことは済んでいる。

 思い出したくもない過去だけど……

 二人きりの密室でこんな雰囲気を醸し出されるのが、どういうことなのかわからない、などというウブな時期はとうの昔に黒歴史として封印している。


「ふ、副社長……っ、あっあの……っ」

「この建物に、見覚えはあるか?」

「え、え……??」


 バクバクと人生最大に心臓が膨らんでいるのではないかと思うほどの鼓動に眩暈を覚える私とは対照的に、照明に陰る端整なお顔は、真剣そのもの。

 妖しげな雰囲気を醸すどころか、背筋をピッと伸ばさなくてはならないような緊張感がにわかに走った。


「ああ、この質問の仕方ではダメなのか」


 副社長は捕まえていた私の腕を解き、まるで尋問を始める刑事のように腕組みをした。
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