副社長のいきなり求婚宣言!?
 誰にも気づかれてはいけない秘密を、持ってしまった。

 天上人と地を這う庶民。

 かかわり合うはずのなかった二人の、密やかな社内電話。

 これじゃあまるで、大人女子向け小説の圧倒的人気ジャンルの話のようだ。


 ――“副社長とデキてるなんて噂にでもなったら……”

 ――“本気になるなら、俺もそれに応えないことはないよ?”

 ――“まどか。”


 展示場のモデルハウスの寝室で、まじまじと見つめられながら言われたことを思い出し、ひとりでぼふと顔をたぎらせる。

 足を崩した私を助けるためだったとはいえ、抱き締められながら囁かれた言葉は、私をのぼせ上がらせるには充分な威力を持っていた。


 あ、あ、あんなこと言われて、どんな顔して行けばいいの……っ!


 一生懸命に終話音を聞いているように握りしめていた受話器を、取り零しそうになりながらガチャガチャとやかましく定位置に戻した。




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