副社長のいきなり求婚宣言!?
*


「お前、絶対に隠し事できないタイプだろ」


 動揺し過ぎなんだよ、と部屋の一番奥のデスクの向こうで、濃紺地にピンストライプの入ったジャケットを脱ぐ副社長が、呆れたように笑った。

  
 長谷川建設ビル三十七階、副社長室。

 モダンなグレーのタイルカーペットを敷いた広い部屋。

 天井から床までのガラス張りからは、じわじわと闇に迫られながらも眠らない下界の街が臨める。

 あちらこちらに灯っていく煌びやかさ。

 初めて訪れた天界の景色に圧倒されるのは当然。

 重厚な扉をくぐったものの、奥に進むことができずに口を開けて突っ立ってしまっていた。


「亜弥音」


 はっとして、こちらへ迫る副社長様へぱちぱちとした瞬きを送り出す。

 呼びかけられた名前が苗字だったことに、ほんの少しだけ淋しさが過ったものの、それには気づかないふりをした。

 少しネクタイを緩めたベスト姿は、ワイシャツのカフスを外しながら私の目を刺激する。

 街の煌びやかさをも余裕で凌ぐ超絶イケメンが、私の心臓を吹き飛ばさんばかりのオーラで目の前に立った。
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