副社長のいきなり求婚宣言!?
「持って来たか? 見せてみろ」


 ん、と差し出される腕まくりをした大きな掌。

 この前は気づかなかったけれど、長いその指は節ばっていて男らしいのに、すらっとした綺麗さに色気を見つけてしまった。


「あ、は、はい……」


 どぎまぎと泳ぐ目を逸らしながら、キャメル色のトートバッグからA3よりも大きめのサイズのスケッチブックを差し出す。

 学生の頃から使っているメーカーのスケッチブックは、一昨日、前の会社を辞めてから初めて買い直したものだ。


「そこ座って」

「はい、失礼します……」


 下界を見下ろす窓辺に沿うように置かれたシックな応接セット。

 濃グレーのファブリックソファの三人掛けの方へ促される。

 固すぎない程よい座り心地に沈まないよう、緊張感を持って浅く腰かけた。

 ぴっと背筋を伸ばすと、ブルーのスケッチブックを持った副社長が、ためらうことなく私の隣にどっかりと並んでくる。


「……っ!?」


 大きく目を見開き、スケッチブックを持つ手を上へと辿る。

 眼鏡のない横顔が、真剣な眼差しで、手元に目線を落としていた。
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