副社長のいきなり求婚宣言!?
 あまり隣に大人の男の人を意識していると、心が平静を保てなくなってきて、別のところに目線を向けて、気持ちを誤魔化す。

 いつの間にか闇に落ちていた下界の煌びやかさを臨む窓。

 そこから部屋の対面側を見ると、こちらも天井から床までのガラス張りが、副社長室にもう一つの部屋を作っていた。

 スモークのかかった間仕切りの向こうには、大きな机と製図台、大画面のPCが置いてあるのが見えた。

 副社長自身が設計を行うのだと見て取れ、仕事に命を賭ける副社長の本気に、胸は素直にときめいた。


「森の中の小さなお家、ってとこか」

「え?」


 せっかく逸らした意識が隣へと引き戻される。


「お前の画には、そのときの気持ちそのものが出るんだな」

「どうやら、そうらしいです……」


 過去に描いた画にこもっていたあの人への想いを見抜かれたくらいだ。

 しみじみと言われた言葉に、否定なんてできない。


「こんなちっさい家なんて描いて。お前の心は閉じこもったまま、まだ解放されていないらしいな」


 一番最初のページに戻した副社長は、軽く溜め息を吐いた。
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