副社長のいきなり求婚宣言!?
「私、模型作るのは苦手で。基本的に不器用なんでしょうね。接着剤があちこちにくっついちゃって。人前に出せるようなものを作り上げたことがないんです」


 この模型の実物の住宅を想像しながら、デザインしているときの楽しさとか、設計から模型を組み立てるワクワク感を思い出す。

 誰がどんな生活をこの家でしているのかとか、その家族は幸せな人生を送っているのかなとか。

 そういう夢や想像が、いっぱいに膨らんでくる。


 やっぱりいいな、家づくり……


 懐かしい感情に浸る心がツンと沁みるのは、まだ傷が癒えていないからだ。


「まどか」


 色褪せてきている思い出に目元を滲ませかけると、今現在に連れ戻してくれる副社長の優しい声音に、切なさがどきんと弾かれた。


「来い」

 
 差し伸べられる大きな掌は、私のもったいなかったらしい数年間を取り戻してくれると、そう信じさせてくれるくらい頼もしく見える。

 この手についていく自分を思うと、また陽の下を歩く人生がぼんやりと浮かんだ気がした。



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