副社長のいきなり求婚宣言!?
 静かにFMラジオの音楽を奏でるステレオの青い光に浮かぶ、滑らかな鼻筋。

 時折すれ違う対向車のライトに照らされる凛とした目元が、堂々と盗み見ていた私の方へと視線を寄越してきた。

 盗んでいただけに、罪の意識が羞恥と混じり合わさって心臓を爆音で弾き飛ばす。


「どこに連れられて行くのか不安か?」

「いいいいいえっ、あああの……っ」


 ニヒルに零されるも私に向けられる軽い笑みに、喉の奥から心臓が顔を出してきそうになる。

 正直不安というものは最初から持ち合わせていなかった。

 今隣でハンドルを握っているのは、一部上場企業、長谷川建設の御曹司、長谷川永人副社長様だ。

 どこかの港に連れていかれて人身売買の商品にされるとか、よからぬお店に売り飛ばされるとか。

 まさか一流企業の副社長様がそんなことをなさるわけはないだろうと、ただ自分の弾け飛ぶ鼓動に素直に顔を赤らめていただけだった。 


「心配するな。今から俺が、全力で君を口説きにかかるだけだから」

「へっ!?」


 く、くど……!?


 ぼふっと顔の温度が上乗せさせられる。

 昼間に言われた言葉を蘇らせる副社長様の爆弾に、キャパのメモリが煙を出して振り切ってしまった。




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