副社長のいきなり求婚宣言!?
口唇に残る熱をたぐり寄せるように、自分のデスクでそっと指を触れる。
潤いが足りない気がするそこに、せめてリップだけでも乗せようと立ち上がった。
「亜弥音! 内線5番!」
化粧室に行こうとポーチを手にした私に、窓を背にした課長が受話器を掲げて見せる。
「あっ、は、はい!」
日常的な光景に、何の気なしに自席の電話を取り「はい、代わりました、亜弥音です」と溜め息に替えて声を出した。
『元気ないな、淋しかったか?』
「……っ!!」
少し意地悪を含めたような低すぎない声音に、心臓が破裂音を立てた。
ふ、副社長……っ!?
『まどか?』
「は、はい! 大丈夫です……っ」
挙動不審に電話に応対する私を、庶務課の同僚達はチラとだけ目を向け、いつものことだと自分の業務に戻っていった。
『お前は、相変わらず……』
くすくすと耳元で笑う声がくすぐったい。
求めすぎるあまりに白昼夢でも見ているのかと思った。
潤いが足りない気がするそこに、せめてリップだけでも乗せようと立ち上がった。
「亜弥音! 内線5番!」
化粧室に行こうとポーチを手にした私に、窓を背にした課長が受話器を掲げて見せる。
「あっ、は、はい!」
日常的な光景に、何の気なしに自席の電話を取り「はい、代わりました、亜弥音です」と溜め息に替えて声を出した。
『元気ないな、淋しかったか?』
「……っ!!」
少し意地悪を含めたような低すぎない声音に、心臓が破裂音を立てた。
ふ、副社長……っ!?
『まどか?』
「は、はい! 大丈夫です……っ」
挙動不審に電話に応対する私を、庶務課の同僚達はチラとだけ目を向け、いつものことだと自分の業務に戻っていった。
『お前は、相変わらず……』
くすくすと耳元で笑う声がくすぐったい。
求めすぎるあまりに白昼夢でも見ているのかと思った。