指切りげんまん。

「がんばれっ」

恥ずかしくて小さく呟いた。


昼休み、野球部の試合を見ながら

トランペットパートのみんなとご飯を食べている私。

「ゆいってさ、
野球部に好きな人でもいるの?」

同じパートの花奏(かなで)

から何とも勘のいい質問をされて焦る私。


「野球部の特定の人っていうよりも
野球部が…というか野球が好きなの!」


元々父の影響で家で毎年甲子園を見ることも多かった。

…でもほんとにそれだけ?

今の言葉はまるで自分に言い聞かせてるみたいだったな。


まさか、りょうくんのこと…

ないないない。


私の言葉に不服そうな花奏。


「私、甲子園のスタンドで吹いてみたい!」

突然そう言ったのは

同じパートの里歩(りほ)

「わかるかもー!」

花奏も共感していた。


「…わたしも吹いてみたいな。
できれば3年で。」

私も共感したけど何だか複雑だった。


「コンクール勝ち進めば甲子園で吹くことは出来ないっていう
複雑な感じだよね。」

里歩も分かってくれたみたい。

「今年がチャンスかなー。」

コンクールメンバーではない
里歩と花奏は

今、野球部の応援の曲を練習している。


うち学校は野球部も吹奏楽部も比較的強く

大会の時期も近いため

甲子園予選と、甲子園での応援は

コンクールメンバー以外で行くことになっていた。




< 3 / 12 >

この作品をシェア

pagetop