あなたと同居なんてありえません!
〝ド〟がつくほどの女たらしだからだ。
〝学校1のイケメン〟よりもあと、と言っても1ヶ月ほどくらいだろうか。
〝女の子をたぶらかす天才〟というのも学校に流れはじめた。
優しい言葉に言い換えてあるが、直訳すると女たらしとなるわけ。
私は、この世の中で女たらしが最も嫌い。
そして、女たらしなことを自分で認めるところも嫌いなところ。
女たらしじゃないと認めないのも、それはそれでむかついていたんだろうけど。
「うるさい。 洗面所使い終わったならどいて」
冷めた目で七瀬 玲を見ると、奴ははいはいとどいてくれた。
はぁ……。 なぜ、私はこんなやつと一緒に住んでいるのだろう。
これの始まりは、約1ヶ月ほど前に遡る────。
*
「今度、香澄(カスミ)さんと食事に行けることになったんだ。 ぜひ、陽葵にも来てほしいって」
夜ご飯を食べ終え、ソファに座りながらテレビを見ている時、洗い物をしていたお父さんに話しかけられた。
私にはお母さんがいない。 というのも、私が4、5歳の時に癌で亡くなったのだ。
そこからは、お父さんのお母さんが私の面倒をよく見てくれた。
家に帰ってきたら、おばあちゃんがいて、いつもなにかお菓子を用意してくれる。
夜ご飯もおばあちゃんが作ってくれて、お父さんが帰ってくるまで色んな話をするのが日常だった。