【短】夏に口付ける。


結局、海は最後まで涙を見せなかった。

私は、最後まで気持ちを伝えられなかった。


そうして強がりと弱虫が最後に話せる時間は終わった。



「私は、今年もアイスばっかり食べてるよ」

でももう、注意してくれる海はいない。


「でも安心して。ご飯もちゃんと食べてるから」


コポコポと柄杓から花に水を注いだ。

君の隣には私の影法師が伸びている。


「海。私は幸せになれるのかな」

私はまだ海が忘れられない、ずっと。


海を思っては泣いてしまう夜もある。

それだけ海は私にとって、大きな存在だった。



< 10 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop