【短】夏に口付ける。
結局、海は最後まで涙を見せなかった。
私は、最後まで気持ちを伝えられなかった。
そうして強がりと弱虫が最後に話せる時間は終わった。
「私は、今年もアイスばっかり食べてるよ」
でももう、注意してくれる海はいない。
「でも安心して。ご飯もちゃんと食べてるから」
コポコポと柄杓から花に水を注いだ。
君の隣には私の影法師が伸びている。
「海。私は幸せになれるのかな」
私はまだ海が忘れられない、ずっと。
海を思っては泣いてしまう夜もある。
それだけ海は私にとって、大きな存在だった。