【短】夏に口付ける。


「生きて、幸せになって」

「か、い…っ、海っ!」

「なんで泣くんだよ。俺は泣かせたくないんだけど」

「…だってっ」

これからどうやって生きていけばいいか検討もつかないよ。

未来が、見えない…。


なんでいなくなるの?

今だってこうして話せてるじゃん。

怪我は酷いけど、元気そうじゃん。


海がいなくなるなんて、…嫌だよ。

けど、そんなこと言ったら海が困るだろうから、私は無理やり笑顔を作った。


「なんだよその笑顔。ぶっさ」

「うるさい」

ムッとしたら海は眉を下げて笑って、

「嘘嘘。可愛いよ」

なんて言うけど、私はまた溢れそうになった涙を堪えるのに精一杯だった。


< 9 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop