【短】夏に口付ける。
「生きて、幸せになって」
「か、い…っ、海っ!」
「なんで泣くんだよ。俺は泣かせたくないんだけど」
「…だってっ」
これからどうやって生きていけばいいか検討もつかないよ。
未来が、見えない…。
なんでいなくなるの?
今だってこうして話せてるじゃん。
怪我は酷いけど、元気そうじゃん。
海がいなくなるなんて、…嫌だよ。
けど、そんなこと言ったら海が困るだろうから、私は無理やり笑顔を作った。
「なんだよその笑顔。ぶっさ」
「うるさい」
ムッとしたら海は眉を下げて笑って、
「嘘嘘。可愛いよ」
なんて言うけど、私はまた溢れそうになった涙を堪えるのに精一杯だった。