あたしたちの恋模様
「大丈夫か?」



中庭に入って、くるりとあたしに目を向ける。



「……たぶん」


「ふは!多分って!」



ケラケラと笑う。



「わかんないんだもん。久しぶりに聞いた名前すぎて……」



悠貴の話題が出なくなったのは、完全にあたしは振られたんだと実感した日から。
ヒロにも小西くんさえも避けられていた。

それはあたしと会いたくないから。

あの日から誰もが悠貴の名前口にすることはなかった。



「まぁ、たしかに。つーかまだ好き?」


「……たぶん」


「ここもたぶんかよ」



ふっと目を細める。
付き合っていた頃よりもずっと優しいヒロにトクンと胸が高鳴ることは何度もあった。



「不確かだから……」


「俺さ、心結と別れてから四年。ずーっと心結に片思いしてんの」


「……っ」



この3年間。
ヒロからは何度も告白をされてきた。
その度に断るのはどうしても気が重いけど、でもやっぱりあたしの心にはひとりの人しかいなくて。

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