あたしたちの恋模様
「あたし、帰るね」



郁人くんに告げて、さっきとは反対側のホームにいく。

もっと幸せな帰り道になるはずだった。

なんでだろう。
ヒロが見たいっていうから浴衣で頑張ったのに。
一目たりとも見てもらえなかった。

〝かわいい〟って言ってほしかった。
見てもらえないからそんな言葉もありえない。



「バカ……」



ヒロのバカ。
なんであたしはあんなのが好きなんだろう。
こんな扱いされても好きなのはなんでなんだろう。

嫌いになりたいのに。
どうして好きなままなのだろう。



「あ、メール」



スマホが震えてショートメールが届く。



〝心結の浴衣姿みたいなぁー〟
なんて能天気な悠貴からのメール。



「ふはっ。悠貴……」



悠貴のメールに救われた。



「駅降りたら電話しよう」



悠貴の声が聞きたかった。
悠貴の声はあたしを救ってくれるんだ。

浴衣姿は残念ながら見せてあげることはできないけど。


< 26 / 298 >

この作品をシェア

pagetop