あたしたちの恋模様
「あ、渡しそびれた……」



右手に残るラッピングされた袋。



「ん?」


「悠貴にチョコ……」



あたしの言葉にヒロの目線があたしの手に持つ袋に移る。



「俺、渡そうか?」


「え?」


「悠貴の家、通るからさ」


「いや、でも……」



さすがにヒロから渡されるのは複雑じゃないだろうか。
ヒロだって複雑だろうと思う。



「別に渡さないとかないから」


「そんなこと思ってないよ」



ヒロはそんな人だなんて思ってない。
ヒロは素直になれなかったりするけど、優しい心の持ち主なんだから。



「悠貴、一つも貰ってないから喜ぶよ」


「……そうなんだ」



誰からももらってないという事実に頬が緩みそうになって慌てて引き締める。


「悔しいな……」


「え?」


「もうそういう顔させてやれるの俺じゃないんだもんな。さ、帰るか」



あたしからチョコの入った袋を奪う。



「俺から悠貴に謝りたいしさ。今日のこと。悠貴の家寄ってくから」


「……うん」



ヒロは誰よりも多分傷ついてるはずなのに。

ヒロの心の内を思うと苦しくなった。

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