ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「俺には葵だけだ」

 戸惑う葵に蒼佑の顔が近づき、吐息がこめかみに触れる。

「君は昔から可愛かったが、大人になってとてもきれいになった。許されるなら、大人になった君を愛したい……身も心も」

 その情熱的な誘惑に、葵の胸はぎゅうぎゅうと締め付けられる。

「……もうっ……やめて」

 葵は唇を震わせながら、首を振った。

「そうやって、やめろと言うのは、俺が嫌いだから?」

 そう問いかける蒼佑の眼差しは、澄んでいた。

 唇から出る言葉はどこまでも甘く、強く、貪欲なまでに葵を求めているのに、その眼差しは純粋で、美しかった。

「それは……」

 なんと答えていいのかわからない。
 戸惑っていると、突然、バチン!と大きな音がした。

「きゃっ……!」

 葵が悲鳴を上げるのとほぼ同時に、エレベーターの中が真っ暗になる。
 すかさず蒼佑が葵の肩を抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。

「――停電かな」
「おっ、落ちる!?」
「落ちない」

 蒼佑はきっぱりと言い放ち、そのまま正面から葵を包み込むようにして抱きしめる。

「俺のことは、海に流されて、漂流しているときにたまたま見つけた板切れだと思って、しがみついていたらいい」

 そうやってなだめるように、葵の耳元でささやく。

(もうやだ……)

 葵は思考する意思を手放すしかなかった。


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