ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
それから数分後。
パチン、と明かりがつき、ホッとすると同時に、エレベーターのドアが開いた。
「いや~! 大変申し訳ありませんでした!」
階段から上がってきたのだろうか。エレベーター会社の作業員らしき男性がふたり、深々と頭を下げながら姿を現す。
「体は大丈夫ですか?」
座り込んだままのふたりを見て心配になったのだろう。
今が夏なら、熱中症にでもなったかもしれないが、季節は春だ。気疲れしただけでなんともない。
葵は顔を上げて、首を振った。
「大丈夫です。急に電気が消えたから、ビックリして……」
何気なく腕時計を見れば、あれから一時間弱たっていた。
蒼佑の電話で急いで来てくれたのだろう。別にクレームを言うつもりはない。
「立てる?」
「うん……」
葵は蒼佑に手を引いてもらいながら、立ち上がると、何度も頭を下げる作業員に会釈し、部屋の前までなんとか重い足を引きずって歩いていく。