ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「……行っちゃった」

 葵はふうっと息を吐き、そのままバタンとベッドに背中から倒れ込んだ。

 八年前のこと――。
 蒼佑から、気持ちは今でも変わっていない。だから本当は、葵は傷つかなくてもよかったのだと言われたことが、頭の中でグルグルと回っている。

(でも、だからって……時間は元には戻らないわ)

 彼が変わっていなくとも、自分の気持ちは、あの頃の自分とは、大きく変わってしまった。

 好きだったからこそ、憎み、怒りを覚え、身を割くような悲しみの中にずっと生きてきた。

 はいそうですかと受け入れられるほどの余裕は、葵にはない。

 そう考えてみれば、蒼佑が好きだった自分は、もういないと言っても過言ではないだろう。

 今ここにいる自分は、もう変わってしまった人間だ。

(それでも好きだなんて、本当に言えるの……? あの人が好きになった私は、もういないのに)

 葵は複雑な気持ちになりながら、目を閉じていた。


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