ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「おおっ……おはようって……! な、な、なんでここにいるの!?」
心臓がありえないくらいの速さで、跳ねている。
アワアワする葵だが、蒼佑はおっとりと落ち着いた様子で、廊下を立ち上がった。
「ひとりで残すのが心配で」
「いやいや! 小学生じゃないし!」
思わず葵は素で突っ込んでしまっていた。
「そうはいっても、気になるだろう」
「なにが?」
「ひとりにしておいて、危険がせまったらどうしよう、とか。普段はナツメ君がいるから心配いらないが」
蒼佑は腕を伸ばしたり、首を回したりした後、軽く目をこすって、腕時計に目を落とした。
いつもビシッときれいな蒼佑だが、さすがに廊下に何時間も座っていたせいか髪は乱れ、スーツもしわが寄っている。
(私のために、廊下に座って番をしていたってこと……? いやでもせめて、廊下じゃなくて、ソファーにでも寝ればよかったのに……)
彼は開かないドアを見て、いったいなにを考えていたのだろう。
本当に、意味が分からない。
そんなことを思いながら、葵はふうっとため息をついた。
(でも……)
この時点で、葵の心は決まっていた。
少し、緊張しながら口を開く。