ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「シャワー浴びてください」
「――ん?」
「洗えるものは、洗濯機の中に入れておいて。着替えはナツメの物を置いておきますから、それに着替えて。とにかくシャワーを浴びてください。このままではちょっと……アレだから」
「アレ?」

 蒼佑が不思議そうに目を細める。

「アレって言ったら、アレですっ……!」

 葵は顔を赤くしながら蒼佑に詰め寄ると、腕をつかみグイグイとバスルームへと引っ張っていく。

「いいから、私の言う事聞いて!」

 若干、小学生のような切れ方だが、

「――わかった」

 葵の一方的な剣幕に、蒼佑は押されながらも、素直にうなずいたのだった。




(このままじゃ、私、ただの恩知らずな失礼な人になってしまうから……今ここで、あの人に親切にする意味は、それだけ。それだけよ)

 昨晩の自分は、どう考えても蒼佑に迷惑をかけ通しだった。

 あのエレベーターの中でひとりだったら、パニックになってとても耐えられなかっただろう。
 想像すると、ゾッとする。

< 110 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop