ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
(食べたら帰ってって、言えばよかった……)
まだほのかに暖かいバスルームで換気扇を回しながら、熱いお湯を浴びる。
いつもより時間をかけて髪を洗い、体を洗って、仕上げにボディクリームを塗った。
「ほわ……」
新しい部屋着に着替えると、急に気持ちがリラックスしてきたのか、あくびが出る。眠いわけではないのだが、神経はまだ疲れているのだろう。
半分ぼんやりしながら髪を乾かし、リビングへと向かう。
「あ」
なんと蒼佑は三十分前と変わらずそこにいた。
皿の上は手つかずだ。
「――あなたって」
思わず深いため息が口からこぼれる。
「ああ。俺、しつこいんだ。自分で言うのもなんだけど」
「そうね……まるでこっちが根負けするのを待っているみたい」
葵は肩を竦め、キッチンに置いてあるコーヒーメーカーをセットする。
背中に蒼佑の視線を感じたが、気が付かないふりをした。