ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「――私はもう、昔の私とは違うの。あなたが好きでいてくれた、あなたに一途だった私ではないの。私はもう、あの頃の自分には戻れないの。なのにそれでも好きって、おかしいと思う」
「――」
「あなたはきっと、失敗した過去をやり直さなければならないんだって、勘違いしてるんだと思う……。でも、いいのよ。時間は過ぎてしまった。終わったの。だからもう、忘れたっていいの。あなたは自由になっていい」
葵は思う。
過去を忘れられず、愛されなかったことをいつまでも苦しんでいた自分が言うことではないかもしれないが、蒼佑は、失敗してしまった過去をやり直したいと思う気持ちが強すぎて、むきになっているのだ。
三十年生きてきて、思い通りにならなかったのが、自分との婚約破棄だけだったから――。それだけのこと。
蒼佑は、そのことを認めるべきだ。
そうすればきっと、彼を苦しめている思い――まるで彼ひとりにかかった呪いのような思いは、消えてなくなるだろう。こんな風に、自分らしくない振る舞いをしなくていい。