ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 今日、この告白だって、なかば脅迫のようだと、葵は思う。

 他人が見れば、待ち伏せ上等な上に職場までやってくる蒼佑は、完全にストーカーだろう。

 なのに――。

(どうしよう……私……)

 鼻の奥がツンと痛くなると同時に、心の中の奥底にしまい込んでいた、過去の、十八歳の葵が、自分は恋を失ったわけではなかったのだと、安心している気がした。
 確かにこの瞬間、過去の自分は癒された気がした。

 だとしたら今の自分は、どうしたいのだろう。

「私……」

 うつむいていた葵は、顔を上げ、肩越しに振り返る。
 切なそうに葵を見つめる蒼佑と目が合う。

「やっとわかった……。あなたも、私と同じように、どこかおかしくなったのね」
「――そうだな」

 過去の記憶に苦しんでいるのは自分だけだと思っていた。
 だがこの人も自分と同じなのだ。

「かわいそう」

 いや、彼の立場からして、ひっそりと生きる葵より、ややこしいことになっているかもしれない。だから揶揄でもなんでもなく、【かわいそう】は、まごうことなき葵の本心だった。

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