ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「私、よくわからなくなってきたわ」
「だったら今目の前にいる俺を見てくれ」
「今……?」

 葵が薄く笑うと、蒼佑は葵の肩に両手を乗せて自分の方に正面から引き寄せる。

「俺はかわいそうじゃない」

 彼の言葉に促されて、顔をあげる。

「俺は、愛する君を腕に抱いて、今この瞬間を幸せに思う、ひとりの男だ」

 きらめくグレーの瞳が、甘やかに輝きながら、葵を見つめる。
 じっと見つめていると、彼の世界に閉じ込められてしまうような錯覚を覚える。

 長いまつ毛がゆっくりと伏せられる。
 つられるように、葵も目を閉じていた――。



 ふたつの唇がおずおずと重なる。

 懐かしいような、怖いような、不思議な感覚が葵を襲う。

 葵の小さな唇がわななくと、蒼佑はそれをなだめるように、甘やかすように、またキスを繰り返す。

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