ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 昔、蒼佑はこんなキスはしなかった。
 せいぜい唇を触れ合わせるライトなキスを繰り返すだけだった。

 それでも葵は毎回ポーッと熱に浮かされて、蒼佑を苦笑いさせていたのだ。

 だがこのキスはどうだ。
 彼の思いに忠実で、強引で、一途で、言葉はないけれど、『君を俺の自由にしたい。思い通りにしたい』という薄暗い欲望が、ひしひしと伝わってくるような気がした。

(頭が、ぼうっとする……。頭が、変になりそう……)

 葵はギュッと蒼佑の腕をつかむ指に、力を込める。

「ん……? もっとして欲しい?」

 それに気づいた蒼佑が、わざとらしく尋ねる。

 そんなはずないし、疲れたから少し休みたいと、言いたいが、口が思うように動かない。
 たくさんの言葉を紡げる理性がない。

 そもそも、蒼佑は恐ろしく頭の回転が速く、人の気持ちをくむ男だ。
 わからないはずがない。

 なのでこれは、蒼佑の意地悪なのだ。

「ばか……」

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