ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「それでね、電話を掛けた理由なんですけど。来週の日曜日、俺が出演するイベントがあるから、来てくれないかなと思って」
『イベント?』
「うん。ティーン向け雑誌のイベントで、ファッションショーもあるんだ。それでついでと言っては何だけど、葵ちゃん、連れてきてもらえますか」
そう言いながら、ナツメは隣りで唇を尖らせている葵に、『言ってやったぞ』と言わんばかりに、軽くウインクをして見せる。
「――」
(これって、褒めてもらえると思ってるのよね……はぁ)
葵は内心ため息をつき、ベッドの上で姿勢を正す。さすがにこれ以上黙っているのは申し訳なさすぎる。
「あの」
『あれ、葵?』
葵の声はちゃんと届いたらしい。だが、まさか葵がすぐそばにいるとは思っていなかったのだろう。声色が少し驚いている。
「夜分にごめんなさい。あの、ナツメがその……わがままを言って……」
『いいよ。ああ、もしかして、ナツメくんが気を使ってくれたのかな』
さすが頭の回転が速い蒼佑なだけある。