ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
なぜ、自分が振られなければならないのだ。
「はっ? そんなわけないじゃない……っ」
葵は慌てて立ち上がり、ブルブルと首を振った。
あれほど拒否しておいて、距離を置かれて気になるなんて、わがままが過ぎる。そんなことは決して、あってはならない。そうだとしたら、自分を軽蔑するしかない。
(こんなのなにかの気の迷いよ……疲れてるのかもしれないし!)
葵は気を取り直して、サッと立ち上がると、
「さて、アイロンの続きでもかけよっと……!」
そして聞かれもしないのに、はきはきとそんなことをつぶやきながら、ナツメの部屋を出て行く。
そんな姉を見て、「素直じゃないなぁ……」と、弟が苦笑いしたことにも、気づかずに――。
一方そのころ。都内のホテルのバーの個室では、男が三人、なにやら意味深に、顔を寄せ合っていた。
「――よくやった」
蒼佑が電話を切ると同時にそう言ったのは、ひときわ華やかな美貌の持ち主だった。