ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
そして「たまには引いた方がいい」と盛り上がっているところに、元婚約者の弟から電話がかかってきたので、テンションは最高潮だ。
蒼佑が通話を終えるまで、ふたりして、子供のように息をひそめていたのである。
「蒼佑は一度思いこむと、突っ走るところがあるからな。押しまくったのなら、引いた方がいい」
瑞樹は、訳知り顔に、うんうんとうなずき、それからソファーに背中を預けて、ワイングラスを傾ける。
優雅にグラスを煽るさまは堂々としたものだが、おそらくすでに、蒼佑の恋の行方などどうでもいいと思っている、そんな気配が伝わってくる。
瑞樹らしいといえば瑞樹らしい。
「またそんな適当なことを」
閑は肩をすくめ、それから蒼佑の顔を覗き込んだ。
「でもさ、俺も最初はなにそれって面白がっちゃったけど、本当によかったわけ?」
「――別に瑞樹にアレコレ言われたから、誘いを断ったわけじゃないんだ」
蒼佑は苦笑して、首を振る。